お金を借りるための相談窓口はじつはかなりたくさんあります。
しかし同時にその窓口によって色々な特色があって、長所もあれば短所もあります。
そこでこの記事では融資初心者のために、まず融資の基礎的な話から始めて、最終的に事業主が融資を受けるときにはどの融資窓口に申込みしたらいいかを判断してもらうための情報を提供します。
融資の種類
事業性融資の形態には大きく分けて4つのタイプがあります。
商業手形割引
商業手形割引というのは、日常取引で取引先への製品の販売やサービスの対価に[約束手形・為替手形]※を受け取っている個人事業主・法人が、手形の支払期日を待たず、取引銀行などにそれを持ち込んで買い取ってもらい(割引)早めに資金を回収する融資の方法です。
ただし信用力で劣る手形の銘柄によっては割引を金融機関に拒絶される場合もあります。
※手形とは一定の金額の支払いを目的とした有価証券で、約束手形・為替手形の二種類があります。
手形貸付
金融機関が借用証書の代わりに取引先が振り出した手形を手に入れて融資を行う方法です。
手形割引とともに短期資金融資の代表格です。
しかし手形割引のように背景に実際の取引があるわけでないので返済の確実性が劣り、金融機関は取引先から担保を出させて融資を実行することが多いです。
証書貸付
金融機関が融資を行う時、融資金額、金利、返済期間、返済方法などを記した証書を取引先から差し入れさせて行う融資の方法です。
主に長期運転資金や設備資金に充てられます。
返済期間が長期に及びその間の貸倒れリスクが高くなるので、金融機関は顧客に担保を入れてもらったり連帯保証人・信用保証協会をつけて対応することが多いです。
当座貸越・事業者カードローン
当座貸越とは銀行が取引先の当座預金の預金残高以上に一定額の小切手や手形の振り出しを認める契約のことです。
これにより取引先は安心して一定額まで預金残高以上の小切手・手形を発行できます。
またこれから派生してできた融資が事業者カードローンで、金融機関が取引先に一定の融資利用極度額を与えて、この限度額の範囲内で繰り返し融資が利用できる契約です。
顧客にとっては必要な時だけ使えて利便性の高いものですが、逆に金融機関にとっては、常に一定額の支払資金を用意しておく必要があることから資金管理面でコスト高になります。
融資のチェックポイント
金融機関が融資の審査を行う時には色々なチェックポイントがあります。
ここでは主なポイントについて解説します。
融資額
顧客の希望する融資額が根拠に基づく本当に必要な額かどうかをチェックします。
ここで過大な融資額と判断されれば減額されます。
チェックの方法は運転資金なら事業規模や月商、設備資金なら融資対象となる設備の見積書などで判断します。
金利
貸出金利は色々な要素で決まります。
融資額、取引先の事業実績や財務内容、返済能力、その金融機関との取引具合、返済期間、保証人や担保の有無などです。
返済期間
返済期間は顧客の希望を聞いて、さらにその資金が運転資金か設備資金か、担保の有無、保証人の数、銀行のプロパー融資か信用保証協会融資かなどによって総合的に金融機関が判断します。
資金使途
資金の目的は主に運転資金か設備資金ですが、さらに重要な点はその融資が売上拡大や事業利益の増加に結び付く前向きな目的の融資か、赤字の補てん資金などの後ろ向き資金かということです。
金融機関としては前者では融資に前向き、後者では消極的・拒絶という判断になります。
返済財源
融資の決定を左右する大きなポイントのひとつです。
金融機関としては融資をする以上、ちゃんと返済してもらうことが前提です。
短期の融資なら返済期日に返済財源が確保されているか、長期の融資なら事業利益から返済ができるかをしっかりチェックします。
事業計画書
この項目で重要なのは計画書に書かれた事業の確実性です。
具体性に欠けた計画書は最初から相手にされません。
明確な根拠に基づきできるだけ詳しい事業計画書を出す必要があります。
特に新規開業資金に関する創業計画書は融資の判断がこれにかかっています。
担保・保証人・信用保証協会
融資において土地・建物などの担保の有無並びに保証能力のある保証人の存在は欠かせません。
無担保・無保証対応もありますが、担保付き融資に比べて融資額、金利、返済期間とも融資条件が厳しくなります。
また信用力の乏しい事業主のため保証を行う信用保証協会がありますのでこちらの利用も効果的です。
他行借入状況・返済状況
申込人が既に他行で事業性資金の取引がある場合、その取引件数・借入残高ならびに返済状況もチェックされます。
特に過去の返済で延滞や滞納などの事実がなかったか詳しく調べられます。
これは個人ローンも同じで、住宅ローンや目的別ローン、あるいは消費者金融等ノンバンクで借りているかどうかまでチェックされます。
税金納付
税金は融資とは直接関係ありません。
しかし審査書類に納税証明書などの提出を求める金融機関もあります。
その理由は申込者が滞りなく税金を収めているかチェックするためです。
税金の未納・滞納がある申込者は融資しても返済がルーズ、あるいは将来問題を起こす可能性が高い人とみなされ融資が受けられない場合が多いです。
公的融資と民間融資
金融機関の融資は大きく分けて公的融資と民間融資に分類できます。
詳細は個別に下記で説明しますが、ここでは大きな分類のみにとどめます。
公的融資
国や自治体が窓口となって行う融資です。
この融資の特徴は金利が低く固定金利で民間金融機関では融資が難しい個人事業主や法人でも融資ができることです。
日本政策金融公庫や地方公共団体が取り扱う融資があります。
民間融資
民間金融機関が行う融資で大きく分けてプロパー融資と信用保証協会付き融資・ビジネスローンがあります。
プロパー融資は銀行・信用金庫などが審査して直接貸付する融資で他の融資と比べて審査・融資条件ともかなり厳しくなります。
一方保証協会付き融資は各県にある信用保証協会が信用力に乏しい個人事業主・法人の保証人となり、金融機関から融資を受ける方法です。
融資の性格は民間融資よりむしろ公的融資に近いです。
新規開業者などは主にこの融資の対象となります。
またビジネスローンはノンバンクと言われる消費者金融、信販・クレジット会社や中小金融会社から事業資金を調達する方法です。
それでは次に事業資金を取り扱う各金融機関の特徴とその利用上のメリット・デメリットを解説します。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫(以下日本公庫)は2008年に旧国民金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が合併して新しく設立された政府100%出資の株式会社です。
その目的は信用力に乏しく民間金融機関から融資が受けにくい個人事業主・法人にも広く融資を行い金融の面から社会の発展に寄与することにあります。
そのため、総じて融資金利は安くまた審査も比較的緩めで、銀行等で融資が受けられない申込者も日本公庫では融資を受けられることが多いです。
さらにビジネスローン会社でも対応していないような新規開業資金にも対応しています。
日本公庫のメリット・デメリット
メリット
①融資の目的が信用力に乏しい事業者への金融のため、銀行に比べても審査が緩く金利も低い、さらに固定金利が利用できる
②日本公庫から融資が出ると一般的に他の金融機関の融資が通りやすくなる
③新規開業資金の場合、開業前から申込ができて開業前に融資が借れるので便利、他の金融機関では開業後しか借れない融資が多い
デメリット
①公的金融機関なので審査に時間が掛かる
②日本公庫の場合、金融庁の指導で連帯保証人が取れないので、事業計画書の中身の精査や担保の有無に融資の重点が移っている、そのため提出書類が煩雑
③資金使途に厳しく資金流用が判明した場合、要件違反として融資の返済を求める
ビジネスローンとは
融資を取り扱う金融機関にも色々あります。
民間の代表は銀行や信用金庫です。
また日本政策金融公庫などの公的金融機関もあります。
しかしこれらの金融機関は低金利の融資が利用できる一方、審査や契約条件はかなり厳しめです。
さらに審査に時間が掛かるので事業主が早く融資が欲しくてもなかなか融資の決定が下りません。
一方、金利は相対的に高いのですが比較的簡単な審査と迅速な融資決定が売りのいわゆるノンバンクと言われる金融会社があります。
大手消費者金融・信販・クレジット会社、さらに中小の金融会社まで様々です。
さらに多くの金融会社が無担保・無保証のビジネスローンを取り扱っているのも特徴です。
資金に困っている人、融資を急ぐ人には便利な金融機関と言えるでしょう。
ビジネスローンのメリット・デメリット
メリット
①融資の決定が迅速で急に資金が必要になったときにはタイムリーな融資が受けられる
②銀行等に比べると審査の書類が少なくて済む。
審査では銀行だと決算書・確定申告書は3期分必要だが、ビジネスローンだと直近1期分の決算書や確定申告書で済む。
③資金の使い途がかなり自由
銀行は融資金の使い途に厳格だが、ビジネスローンは事業に関してなら広範囲に自由に使える。
④融資の条件は無担保・無保証対応の金融会社が多い
そのため保証人の確保を心配する必要が少ないが、法人の場合は代表者が連帯保証をすることが一般的です。
デメリット
①銀行融資や公的融資に比べると金利が高い
そのためできれば銀行融資・公的融資が出るまでのつなぎ資金として利用したり、事業性カードローンで必要な時だけ借入する使い方が望ましい
②銀行等に比べて借入限度額が低い
ただし担保があれば、その分金利や融資額、返済期間などで優遇が受けられる可能性が高くなる。
③審査が緩くても事業実績のない新規事業者に対しては融資の受付をしていないところが多い
信用保証協会付き融資
信用力に劣る事業主が円滑な融資を受けられることを目的として設立されている公的機関に日本政策金融公庫以外に各都道府県には信用保証協会があります。
事業主が銀行等から融資を受けるとき、担保や保証人が不足して融資が受けられない場合、信用保証協会が事業主の連帯保証人となることで融資を受けられるようになります。
ただし申込者は信用保証協会に保証料を支払わねばなりません。
金融機関は事業主が死亡・高度障害等で急に支払い不能になっても保証協会から全額弁済を受けられるので安心して融資ができ、事業主は保証協会に年率1.35%程度の保証料を支払うことで融資を受けられるメリットがあります。
しかし2007年に「責任共有制度」が導入され金融機関が融資の責任を一部負担することが必要となり、協会の保証部分が100%から80%に引き下げられました。
それにより金融機関の責任が重くなったことから、近年は保証協会付き融資と言え以前より審査が厳しくなっています。
保証協会付き融資のメリット・デメリット
メリット
①一般的な銀行金利より低い金利で借れる
②返済期間中固定金利であり、担保が出せるならさらに返済期間を長く取れる
③無担保・無保証扱いがある
④協会付き融資が出ればそれを借入実績として銀行等のプロパー融資も出やすくなる
デメリット
①銀行のプロパー融資に比べて審査時間が長く、特に新規開業資金だと1ケ月以上かかる
②運転資金・設備資金以外の資金に使いにくく、資金の目的外使用が分かったら全額返金を求められる
③銀行への金利以外に別途保証協会あて保証料が掛かる
銀行、信用金庫等のプロパー融資
銀行等民間金融機関が事業主に直接融資をするタイプの融資をプロパー融資と呼びます。
プロパー融資は新規事業主に実行されることはまずなく、その金融機関と一定期間預金取引等があり、2~3期以上事業実績を持っている個人事業主・法人に対して行われます。
プロパー融資が受けられるということは、その金融機関が事業者を堅実な取引先であるとみなしている証拠にもなります。
また事業者が複数の金融機関と融資取引をしている場合、最もプロパー融資の残高が多い金融機関を一般的にメインバンクと呼んでいます。
しかし信用保証協会付き融資取引だけがある金融機関はメインバンクとは呼べないことに留意してください。
理由は信用保証協会が保証する融資なら一般的に金融機関は取引の有無に関係なく融資を行うからです。
プロパー融資のメリット・デメリット
メリット
①公的機関に比べて融資の際に用意する審査書類が少なめで済む
②公的機関に比べて審査が早いので急ぎの資金も間に合うことが多い
③プロパー融資取引はメインバンクとの本格的な取引の証でもあり、メインバンクがあることで事業主としての社会的信用度も上がる
デメリット
①公的機関に比べて審査が厳しい
②融資契約に関して担保や保証人など条件も厳しい
③融資金利も公的融資に比べて高めで、変動金利なので金融情勢でいきなり上がることもある
④連続した赤字など会社の業況が悪くなると、融資姿勢が途端に厳しくなり公的機関より対応はシビア
金融機関別比較一覧表
審査の速さ | 融資金利 | 審査書類の精度 | |
---|---|---|---|
ノンバンク※ | 申込日当日~数日以内 | 年6.0~年18.0% | 比較的簡単 |
日本政策金融公庫 | 3週間~1ケ月半 | 年1.3~年2.4% | 標準より高い |
信用保証協会付き融資※ | 2週間~1ケ月 | 年1.2~年2.4% (保証料別※) | 標準と同程度 |
プロパー融資※ | 1週間~2週間 | 年2.0~年6.0% | 標準 |
※ノンバンク…消費者金融、信販・クレジット会社、中小金融会社の総称
※信用保証協会付き融資…金融機関の融資を信用保証協会が保証した融資
※信用保証料率年0.5%~年1.9%
※プロパー融資…銀行・信用金庫等が直接顧客に融資したもの
まとめ
そして事業主が金融機関から融資が借れる難しさもまさにこの順番で上がっていきます。
つまりノンバンクと呼ばれるビジネスローンが最も借りられる可能性が高く、銀行等のプロパー融資が最も借りにくくなっています。
プロパー融資になると堅実な事業実績・確実な返済能力・担保や保証人の確保なしには借れないのが現実です。
これから事業性資金を借りる予定の人は、今自分がどれくらいの融資条件を満たせるかを十分客観的に判断して、自分に最も適した資金調達の方法及びその取扱いをしている金融機関を選んでいただくようお願いします。